收藏

louis vuittonルイヴィトンdamier facetteダミエファセットジョーヌジッピーウォレット編集

 淡島の車はシヴォレーの小型車コルヴェアであった。朝倉を助手席に乗せてエンジンを掛けると、淡島はハンドルにおおいかぶさるような格好でスタートさせた。空冷エンジンだからあまり暖気運転の必要はない。格好だけはスマートな二・四リッター八十馬力のこんな車も、日本に入ってくると二百二十万もする。  姿勢を見ただけで分かるように、淡島の運転ぶりは、慎重というより下手と言ったほうが正確であった。 「園田部長は、最近、彼女を取り替えましてね。いまは、その女に夢中なんです。今夜もきっと、その女のとこにいるでしょう」  と、言う。  シヴォレー・コルヴェアが着いたのは、永田町にある千代田コーポという分譲式高級マンションであった。京子が、小泉経理部長にあてがわれて住んでいる参宮マンションと同じような構えだ。ただ違うところは、地価がひどく高いために、駐車場が地下になっている。  淡島は、眠たげな眼付きの駐車場係りに車を預けた。自動エレベーターで二人は九階に昇る。 「お願いだ。君に脅迫されて、僕がここにやってきたということにしていいだろう。そうでないと、部長は僕に|辛《つら》く当たるようになる」  エレベーターのなかで、淡島は朝倉に哀訴した。 「好きなように」  朝倉は肩をすくめた。  エレベーターを降りた淡島は、松下と表札の出た九〇二号室の前に立つと、インターホーンのスウィッチを押そうとした。 「待て、居留守を使われたら面倒だ」  朝倉は淡島の背後で、ズボンの|裾《すそ》の折り返しから、先端を潰した針金を取り出していた。淡島を肩で押しのけると、ドアの自動錠の鍵穴に針金を突っこむ。三十秒も朝倉が指先を動かさないうちに、錠のロックが解ける音がした。朝倉はゆっくりとノブを廻すと、静かにドアを開いた。暖房で熱いほどの室内の空気が顔を襲う。  入ったところが二十畳ほどの居間兼応接室であった。突き当たりの奥の左半分がダイニング・キッチン、右半分が寝室らしい。  寝室のドアは開けっ放しになっていた。女の|嬌声《きょうせい》と|尻《しり》を引っぱたくような音、それに、園田の息苦しげな|喘《あえ》ぎを混えた笑声が聞こえる。  淡島が入ってきたのを確かめて、朝倉は後手にドアを閉じた。  寝室から、園田と女が姿を現わした。二人とも素っ裸であった。便々たる太鼓腹が床に垂れそうな格好の園田が四つん|這《ば》いになり、その背に小柄だが|瑞《みず》|々《みず》しく均整のとれた十八、九の女が馬乗りになり、平手で園田の尻を|叩《たた》いている。  笑いふざけながら寝室から出てきた二人は、朝倉たちを認めて|驚愕《きょうがく》した。園田は思わず立ち上がり、転げ落ちた女は両乳房を抱いて寝室に駆けこんだ。仰天のあまり園田のことにまで気が廻らないらしく、内側からドアを閉じる。
表示ラベル: