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 こうなるとますます、神名が幸せであればそれでいい、などという言葉は信じられなくなる。いや、たぶん彼女だったら幸せな神名の姿を見たら身をひいてしまうだろう。十年以上想いつづけながら、そのそぶりさえ見せていなかったのだから、きっとそうするだろう。きれいかもしれないけど、信じられない。  また別れ別れになってしまうなんて、あたしが許さない。 「ほんと強いよ。さもなきゃ十年以上も想ってられるか」 「さっきいったじゃない。わたしなんか、かれからしてみればもうおばさんよ。恋の対象外だわ」 「ウソだね。そんなのは、ほら、あれだよ。グリムのキツネと同じだ」 「なにそれ」 「とれないブドウを、あれは酸っぱいにちがいないってあきらめるキツネだよ。あんたはそうやって、自分をだましてるんだ。あんたはいまでも神名にほれてるよ」  一気にいってやると、図星をさされた紫東は気をのまれたように目を見ひらいて、それから力なく首をふった。 「バカなこといわないでよ……」  彼女は反論しようとしたけど、語尾は力なく静けさに溶けていった。そのとき、あたしは近づいてくる足音に気がついた。反射的に銃をひきぬき、電気を消す。暗闇の中、カーテンの隙間からもれてくる街灯の明かりだけをたよりに、壁際に身をよせようとしたら、紫東に手をひかれてピアノの陰につれこまれた。  息を殺してまっていると、靴音はどんどん近づいてきた。そして音楽室のドアが開き、懐中電灯の明かりが、おざなりになめるように室内を照らしていった。ちらりとのぞくと、眠そうな目をした気の弱そうな初老の警備員だった。あたしたちを発見できなかったのか、警備員は小さく首をふって、行ってしまった。その靴音が完全に消えさったのを確認してから、あたしたちははいってきたときと同じようにして外に出た。  学校からかなり離れてから、どちらからともなく笑いだした。 「なんかほんと中学のころみたいだった。先生の目を盗んでいたずらしてる子どもの気分よ」 「あたしもひさしぶりだったな。こんな感じ」  ひとしきり笑ってから、紫東はまじめな顔であたしを見た。 「ありがとう、エルフィ」  そんなまじめな顔していわれると、こっちが照れるだろ。あたしはくるりと背をむけた。 「さ、行くよ」
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